フレンチブルドッグの肥満細胞腫
あれだけ暑かった大和市ですが、すっかり寒くなり長袖コートを着ている人達も増えてきた今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか??
この様な季節の変わり目は何を着て外出するべきか、なんだかよく分からなくなりますねー。。
今日も、迂闊に半袖短パンでフラッと出勤したら周りの人たちは長袖コートの人々ばかりで辱めにあいましたね。(//∇//)
今回は症例報告:「フレンチブルドッグの肥満細胞腫」について書いていきたいと思います!!
フレンチブルドッグ 9歳 未去勢雄
胸の皮膚の下にしこりがある、陰嚢の表面に黒い出来物がある、を主訴に来院。
早速、触診から行っていきます。
明らかなリンパ節の腫れなどは無さそう、、
続いて、エコー検査と出来物の針生検を、、
幸い脾臓や肝臓、周りのリンパ節に明らかな変化は今のところ見られず、、
針生検で取れた細胞を見てみると、、
胸のしこりで取れた方からは、明らかに顆粒をたくさん持つ細胞が何個も見られました!!
フレンチブルドッグさんでこの様な顆粒のある細胞が見られる場合、高確率で肥満細胞腫である事が疑われます!!
肥満細胞腫とは犬の皮膚の悪性腫瘍で最も多く見られるものです。
中年齢(7〜10歳前後)の犬によく見られ、皮膚表面に赤い腫れの様な形やドーム状などと表現される出来物としてみられます。
好発犬種として、ブルドッグ系統(パグ、フレンチ・ブルドッグなど)、ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバー、コッカー・スパニエール、シュナウザーなどがあります。
針生検で、皮膚の肥満細胞腫が疑われた場合、まず治療の第一選択として外科切除を考えていきます。
さて、もう一つの陰嚢の方からは、明らかな腫瘍を疑う細胞は見られず、、、
ただ、陰嚢表面の黒い出来物がここのところ大きくなってきたとの経過やエコーで偶発的に見つかった前立腺肥大症への治療から、オーナー様と相談し、陰嚢切除と去勢を同時に行う事に。
肥満細胞腫の様な皮膚腫瘍を完全切除する際に特に気をつけなくてはならないのが、「外科マージン」をどこまで取るかという事です。
「外科マージン」というのは、簡単に言うと腫瘍の根の様なものが残らない様に表面に見えている腫瘍の縁より少し大きめに切り取る部分の事です。。
この外科マージンを誤ると、見えている部分は取れても、切り取った境目に少し腫瘍の根の部分が残っていて、そこから再発、、、なんて事も起きかねません!!
今回の出来物は、皮下にあるのて触診のみで腫瘍の縁を確認しなくてはいけないので、なかなか大変、、
肥満細胞腫疑いの出来物なので、2〜3センチほどの外科マージンを取り、出来物を切除。
切除の仕方について、色々ありますが、自分はこの写真にある切除の仕方を参考に昔からやっております。
7〜8年前くらいにインターズーから出版されたウサギの教科書ですが、当時色々なオペ任せてもらえる様になった若手の自分にとって外科の基本を学ぶ教科書として読んでましたねーp(^_^)q
こちらが胸の出来物が取れたところ、、
ピンセットの先で指している所に出来物が見られます。
こちらは直ぐにホルマリンに浸けて、病理組織検査に提出します。
胸と陰嚢部分を縫合して手術は無事終了。
胸の傷は肥満細胞腫疑いの為、合併症として癒合不全(傷が上手くくっつかない事)が起こりやすいので注意が必要です!
そして陰嚢の方は股の下というとても皮膚の張力が掛かるところである為、こちらも癒合不全が起こらないように少し長めに入院管理しましたが、問題無く退院。
退院後もオーナー様ご家族に管理してもらい、癒合不全もなく無事に抜糸を行い、治療終了!!
ワンちゃんも問題無く元気にしてくれています!
そして、外部の病理検査会社に出していた、組織検査の結果は、、
「胸は肥満細胞腫、陰嚢は表面の出来物は非腫瘍性の出来物ですが、陰嚢の裏に肥満細胞腫が認められるます。どちらも完全切除されています。」
無事に完全切除出来てました!
そして、陰嚢裏に狙いとは別のかなり小さな肥満細胞腫が隠れていたとの結果が、、、
今回はオーナー様と相談し、オーナー様のスペシャルな判断で陰嚢切除に同意して頂いた為、術前に確認出来ていなかった陰嚢内の肥満細胞腫を切除する事ができたという、ラッキーな結果になりました。
正直ヒヤリとする結果です。
今回の症例を経験し、まだまだ精進していかなくてはならないなと考えさせられた症例でした。
おひさま動物病院では9月から11月
まで健康診断キャンペーンを行っています!!
・最近気になる症状がある
・血液検査はしてるけどエコー検査はした事がない
・心臓薬を飲んでるけど、心臓エコーをこの3ヶ月以内でしてない
などなど、この様なワンちゃん、猫ちゃんがいましたら是非ご相談下さい!!