猫の血栓塞栓症

まだまだ暑い日が続いております今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか?

 

早朝などはたまに涼しい風が吹いてきて、秋の訪れも感じさせ、、、、いや、まだまだ蒸し蒸ししていますね笑。

 

今回も症例紹介で、猫の血栓塞栓症です。

 

猫 雑種 推定11〜12歳

昨日から両方の後肢が動かないとの主訴で来院されました。

来院時の様子では、両後肢とも血色が悪く、動かせない様子で、さらに体温も低くなっておりました。

 

早急にお預かりをし、検査と同時並行で治療を開始します。

緊急エコーを行いつつ、抗血栓治療を開始します。

厳しい状況ですが、血栓を融解する治療に関しては既に時間が経ってしまった為、これ以上の血栓が出来ないように治療していきます。

 

猫さんの血栓塞栓症の原因で1番多いのが、心疾患による血栓症なのですが、この子の場合は、、、

 

心臓は問題なさそう。。。

 

心臓に血栓を表すモヤモヤエコーやうっ血もない。。。

 

 

となると、他に血栓を作る原因があるはず。。

 

 

 

すると、とても大きなお腹のできものが!!

 

 

直径7〜8センチは余裕であるくらいのサイズ、数年前から大きくなっており、他の動物病院では取る事が出来ないので様子を見ましょう、と指示されていたそうです。

 

歩く時もできものを引きずってしまう為、常にできものの表面に傷があり、痛々しい姿に。

 

こちらにもエコーを当ててみると、、、

 

本来お腹の中にあるはずの消化管ができものの中にギュウギュウになって入っております。。。(;_;)

 

これはお腹の横が大きくなる鼠径ヘルニアと呼ばれる、鼠径部の筋肉同士が裂けてしまった事や、鼠径部に元々小さな穴が空いていて、内臓脂肪が増えた事や加齢性などにより穴が広がって腹筋の外に出てしまう病気です。

 

まずは入院下で、血栓塞栓症が急激に広がるのを抑える治療をしつつ、急性腎障害への治療や痛みのコントロールを続けて行きます。

 

猫さんの血栓塞栓症はとても緊急性の高い病気です。

血栓塞栓症により入院した猫さんの退院率は30〜40%ほどとのデータも出ており、生存の危険がかなり高い非常に恐ろしい病気なのです。

 

幸いな事に、この子は治療反応も良く、入院は1週間ほど掛かりましたが、腎障害なく、体温も正常に戻り、食欲もなんとか食べてくれるまで回復し、内服治療は継続しながら退院する事が出来ました!!

 

退院の際に、今後血栓の原因となったと考えられる鼠径ヘルニアに関して整復手術を行う必要がありますと説明。

取り敢えずですが、猫さんもとても頑張ってくれて退院出来たー!!と喜んでいたところ、、、

 

 

今度はその猫さんが、すごく元気になったのだけどもお腹が更に大きくなってきた!、との主訴で来院。。

 

お腹が退院時よりも大きくなっている。。。

 

恐る恐る検査をしてみると、、

 

今度は鼠径ヘルニア内に膀胱が入り込んでいる!!!

 

 

 

鼠径ヘルニア内に膀胱が入り込む事で、他に入り込んだ消化管などとギュウギュウになり、膀胱や尿管が損傷したり、壊死する恐れがある為、緊急性が高くなります。

 

オーナー様にも現状を説明し、鼠径ヘルニアの緊急オペを行います!!

 

実際、ヘルニアを開けてみると、小腸・大腸の殆どがヘルニア内に入り込んでいる状態。。。

更には膀胱もバチバチに入り込んでおり、少しずつ手でゆっくりと鼠径部から腹筋内へと戻して行きます。

 

 

ヘルニア嚢を開けたところ。

真ん中にあるのが膀胱です。その周りが小腸と大腸。

消化管の殆どがヘルニア内に入っている状態。。

 

 

幸い、臓器が壊死している様子もなく、何とか全ての臓器をお腹の中へ納め、穴の空いた部分(ヘルニアリング)を縫合し、皮膚も寄せて何とか終了。

 

 

その後、麻酔の影響や血栓の再発も無く無事に退院し、現在は内服治療は続けながら元気にしてくれています。

 

今回は鼠径ヘルニアによる血栓塞栓症が疑われた猫さんに関して書いて行きました。

 

何年も前から出来物がある、

急に出来物が大きくなった!、などなどありましたら是非ともおひさま動物病院までご相談を!!

 

9月、10月、11月は秋の健康診断キャンペーン中です!

是非ともこの機会に、ワンちゃん猫ちゃん達の健康診断をして行きましょう!!